この本が刊行されてから、はやくも9年という歳月が流れました。刊行されたのは2014年3月で、私が追手門学院大手前中・高等学校で校長に就任したのが2014年4月です。刊行されてすぐに書店で購入して読みましたので、記憶に残っていますし、その時に貼った付箋まだ残ったままになっています。校長として、どんな学校にしていくかというビジョンを示す際に、刊行されたばかりのこの本に示されたキーワードである「学びの個別化」「学びの協同化」「学びのプロジェクト化」という言葉を紹介させてもらいました。当時は、まだまだ私たちの耳にも馴染みのない言葉で、先生方の中にもどれだけ浸透できたか、はなはだ疑問でしたが、これからの学校の在り方を考えるうえで、極めて重要な観点だと思いました。
2018年度に追手門学院中・高等学校に戻ってきたときには、3つの学びの融合とリフレクションを学びの軸として学校を作っていこうということが示されました。それ以降、私たちはコロナ禍の時代を生きてきたわけですが、この2023年度に、今一度、『教育の力』に書かれている内容を振り返りながら、本校教育の新たなフェーズへと進んでいきたいと思います。近年、保護者の方の中にも、苫野先生のお名前や、その著書の内容について詳しい方がいらっしゃって驚くことも増えてきました。教育現場は、なかなか短時間で変わることが難しく、進んだと思ってもまた元に戻ってしまったりすることも多いのですが、保護者の皆さまにも、ぜひこの本をお読みいただき、ともにより良い学校を築いていきたいと存じます。