ゴールデン・ウイーク中に、黒木華さんが主演する映画を観てきました。
『せかいのおきく』、阪本順治監督で、モノクロの映画(正確にはカラーで撮影して、一部を残してほとんどをモノクロ処理したようですが)、時代設定は江戸時代。おきくは、もともとは武士の娘だけれど、一般庶民の中で生活をしています。ある出来事のために声を失ってしまうのですが、気丈にふるまい、「せかい」の中でたくましく生きています。
細かな内容は語るべきではないと思いますが、江戸時代には、そもそも「世界」という概念はなかったと思います。せいぜいが自分たちの属する「藩」が世界だったはずです。「せかい」と表現することで、私たちが「世界」という言葉から連想することとは、少し違ったものが生み出され、私の頭の中で「せかいのおきく」のイメージが広がっていきました。身分社会の中で厳しい毎日を過ごす人々の様子が描かれる一方で、純粋に人を思う気持ちを大切にし、言葉にできない気持ちをどう表現しようかともがいている人の表現も丁寧にされていて、黒木さんの優れた部分を阪本監督がしっかりと引き出しておられるなあ、と感心いたしました。
アート系の映画館での上映となりますが、ぜひご覧ください。