2学期、地理総合と探究の授業を掛け合わせ、人や国家が物事を決定するときの意図を考えるプロジェクトを行いました。
イギリスのEU離脱や近年の移民の受け入れ廃止、アメリカ大統領選など、「国境」が大きなトピックとして挙げられています。この自分と相手、自国と他国の「境目」に着目して実践!
探究では他者が作った作品に手を加える活動を行いました。多くの生徒が「思いやり」の観点から他者の作品に手を加えるのを拒みました。地理でも個人の立場だと、移民を「思いやり」の観点や労働力の確保という「経済」の観点から受け入れる意見が多数。
一方で、なぜアメリカやヨーロッパの国々は移民の受け入れを拒み始めているのでしょうか。なぜ国境というルールを作ったヨーロッパがEUという形で国境を緩めるのでしょうか。学びを深める中で、社会保障が間に合わない、自国民の職が奪われるという「経済」の観点から受け入れないを選択する生徒が多数。
ではなぜ、個人の集合体である国家の決定は個人の決定と大きくかけはなれるのでしょうか。
これまでの探究や地理の授業で生徒自身が書いた記述を分析して進めました。
ルソーの一般意志と特殊意志の考え方を用いて、「個人」と「国家」、「自国民」と「移民」、「経済」と「思いやり」、「治安」、「福祉」など様々な立場や観点から多面的・多角的に考えました。
実際の生徒の記述!
個人が主に大切にしているのは一般意思であり、「かわいそう」、「命を大切に」などの人権を重視し、移民を受け入れる意見が多かったが、国家が主に大切にしているのは全体意思であり、「福祉の点で重くなる」、「自国の職がなくなる」など、自国の経済を重視し移民を排斥している。このことから、個人は一般意思、全体意思を天秤にかけたとき、一般意思を重視しているが、個人がたくさん集まり国家になることで、個人の「経済を優先すべき」という思いが膨張し全体意思が重視されるようになる。
今回の「地理総合×探究」では、物事を決定する際に社会的事象の多面性や多角性を用いて考える活動を含み、「学び方・考え方」を学ぶという形での横断の方法を提案する形となりました。
本研究内容は、日本社会科教育学会の課題研究として発表が行われました。