Theme1
進路選択に迷いなし。
改めて探究の成果を実感。
私は昨年度、数学と探究の講師として授業を担当するだけでなく、高校3年生の担任として進路指導も行ってきました。生徒たちと一緒に将来を考えていく中で、まずはじめにやったことがあります。それは4月にあった最初の探究の授業で「いい進路とは何か」をそれぞれに定義すること。それと同時に、担任として、より直接的な目標である志望校も決めてもらいました。そのふたつを行う中で驚いたのが、進路選択に迷いを抱く生徒がとても少なかったという事実です。そもそも生徒たちは、それまでの2年間の探究の授業で、自分自身の魅力をきちんと認識しています。そこに将来のイメージをつなげることで、自分が何をすべきなのかが自ずと理解できたんでしょう。あの時は、改めて探究がもたらす成果に気付かされましたね。
また昨年度は、塾や家庭での学びではなく、“学校だからこそできること”に意識を向けた1年だったと思います。その具体的なアプローチとして、例えば同じ大学を目指すメンバーでグループをつくり、オープンキャンパスや受験対策などの情報を互いに共有するという方法をとりました。自分が抱いている将来像を他人に話すというのは、時として勇気が必要であり、また恥ずかしさを感じることかもしれません。しかし同い年の仲間と意見交換や相談ができるのも、学校ならでは。教師である我々には言いにくくても、友達となら……という声も実際に挙がっていました。あくまで“学校の”教師として、仲間同士が本音で語り合える環境を、率先してつくってあげたいですね。
同い年の仲間と
相談ができるのも、
学校ならでは。
Theme2
すべての個性を長所に変換。
自分を自由に表現するために。
私自身も探究のテーマである「とりあえずやってみる」という言葉に影響を受けたひとりです。自らのプライベートにリフレクションを取り入れ、自分を理解するための時間を確保するようになりました。そうすることで「新しい挑戦へのハードルが下がる」という変化が訪れます。「面白そう」「興味がある」と感じたものには、積極的に手を出すようになり、バイクなどの趣味が増えました。それがまた次の探究の授業をつくるためのヒントを与えてくれますよ。このように探究を担当したことで、教師としての考え方も変わっていき、今ではより強く多様性を意識するようになりました。生徒一人ひとりの性格や個性に良し悪しの判断をつけず、すべてを長所だと受け取っています。「自分を自由に表現できる」という価値を、探究の授業の中だけでなく、学校全体として大切にできるといいですね。
現在、探究の授業数は週に2コマ。その中で、より多くの気づきがあるようにと意識します。しかしこの「2コマ」というのが探究にとって適正な時間かどうかはいまだ模索中で「あと少し考えれば、いいものができるのに……」となることもしばしば。その一方で、ただ時間を増やすだけで本当に効果が出るのかという疑問もうまれます。だらだらと取り組むことで、アウトプットの質が下がってしまっては意味がありません。その判断はとても難しいところです。またアイデアは「偶然」からうまれるのか、それとも「蓄積」からうまれるのか、その見極めも探究の難しさであり、同時に面白さでもあります。その問いに対する答えは、インプットとアウトプットのバランスを見極めることで、見つかるかもしれません。探究を担うメンバーとして、今後も追求していきたいですね。