一般社団法人 Learn by Creation 代表理事 / 一般社団法人 FutureEdu 代表理事 / Peatix.com 共同創業者 竹村 詠美

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INTERVIEW

2022.12.02UP

子どもたちが本当に楽しいと思える教育を求めて。(前編)

PROFILE

竹村 詠美

一般社団法人 Learn by Creation 代表理事 / 一般社団法人 FutureEdu 代表理事 / Peatix.com 共同創業者

慶應義塾大学経済学部卒 | ペンシルバニア大学ウォートンビジネススクール修士卒|ペンシルバニア大学国際ビジネス修士卒 
マッキンゼー米国本社や、日本のアマゾンやディズニーなど外資系7社を経て、2011年にPeatix.comを共同創業。2016年以来グローバルなビジネス経験を生かした教育活動に取り組んでいる。
教育ドキュメンタリー映画「Most Likely to Succeed」上映普及活動、「Learn by Creation」主催、PBL、SELを含む先端教育研修の実施などを通じ、クリエイティブリーダーを育むための、学習者中心の学びやホール・チャイルドを育む環境が広がることを支援している。

INTERVIEWER

池谷陽平

探究科 Driver

Theme1

先生を応援し、学習者中心の学びを設計。
そのすべてを楽しみながら。

多種多様なフィールドでさまざまに活躍されている竹村さん(以下:エミさん)ですが、現在は主にどういった事業を行っているかを教えてください。

はい。さっそく難しいご質問ですね(笑)。今は主にふたつの社団法人を通じて、教育改革を支援するために取り組んでいます。ひとつめは『FutureEdu』というもの。これは『Most Likely to Succeed』という映画を、都会の人だけではなく、今の学びにモヤモヤしているすべての人たちが鑑賞できる機会をつくりたいという思いから始まりました。

今や日本全国のとても多くの学校で観られている映画ですね。

そうですね。ありがたいことに離島にあるような小さな学校でも観ていただくようになりました。そしてその上映会で全国各地を訪問させていただく中で、変化をするために必要な情報や仲間が圧倒的に不足していることに気づきます。そこでチームを結成して、国内外の優れた学びに関する情報発信するようになりました。

発信の対象となるのは、学校ですか?

学校や保護者の方々が主な読者ですが、それだけではありません。教育に関心を持つ機関などを含めて、講演やワークショップなどを行なっています。つまり具体的な活動としては、ひとつ目が『Most Likely to Succeed』の上映会、ふたつ目が情報発信。そして今みっつ目として力を入れているのが『ブリッジラーニング』になります。

それはどういった取り組みになるのでしょう。

『ブリッジラーニング』は、「学習者中心の学び」に情熱を持つ4人のメンバーで運営しています。主に教員研修を事業としており、全員が「先生が変わることで、最終的には教室が変わる」という信念を持っています。

先生を応援することが目的なんですね。

そうですね。たとえば『ハイテックハイ』や『ミレニアムスクール』といった海外の学校のメソッドを取り入れながら、チェンジ・マネジメントというか、先生の中に変化が生まれるような対話型プログラムをメインにやっています。

より具体的には、どういうアプローチをとっていますか?

大きく3つのステップを提案しています。はじめは、先生としてのあり方に向き合いながら、学習者への理解や共感を深めていくという、学習者中心の学びを実践するための基礎編です。その学び舎には、生徒さんが自己への意識を高め、社会性を身につけ、より良い判断ができる様になるという社会性と情動の学び、つまり英語だと「SEL(=Social Emotional Learning)」と呼ばれるものが必須となり、参加者の先生方が、自らの経験を振り返りながら、仲間と学びあう場を提供しています。

それに関しては、追手門の探究や創造コースなどでも、かなり力を入れている部分ですね。

そうですよね。先ほど授業を拝見していて、そう感じました。そしてふたつ目が、一般的に『プロジェクト型学習』と呼ばれている探究的な学びの教授法を、学習者視点の観点で仲間と共に改善しながら体験的に学ぶステップになります。これは学習者を中心とした教育を構築することで、個々が本当に納得して取り組める学びを設計するものですね。そして最後は決まったプログラムがあるわけではなくて、参加された先生たちのニーズに応じて、実際に学校でのインプリメンテーションに伴走するような感じです。

竹村氏は現在アメリカ在住。一時帰国のタイミングで対談をお願いしました。

『O-DRIVE』立ち上げ時から竹村氏との対談を熱望していた池谷先生。

ここまでがひとつ目の事業である『FutureEdu』の概要ですね。すでに深堀りして聞きたいことがたくさん出てきましたけど(笑)、いったんふたつ目にいきましょうか。

そうですね。もうひとつが『Learn by Creation』です。これはもうちょっとメッセージ性の強い組織で、「学びのつくり手を増やしたい」という思いで運営しています。

その“学び”っていうのは、具体的にはどういったイメージのものですか?

そもそも学びの本質というのは、受動的に受けるものではなくて、自分たちで意味をつくり出していくことだと思います。そしてそれが世の中と共有できる価値の創造に向かっていればより意義深いなと感じていて。ただし、それを「さあ、つくれ!」って上から目線で言うのではなく、楽しみながらやっていきたいんですよね。

なるほど。それ、すごく分かります。

学ぶことで自分の成長を実感して、それを共有し、お互いに讃え合うことって、本来すごく楽しいことですよね。だけど「つくる」とか「創造する」とかって、特殊な才能を持っている人だけのもの、もしくは技術系の人だけのものと捉えられることがあります。そうではなくて、つくるって言うのは当たり前だという文化を広めたいという思いで、イベントを開催したり、自治体と一緒にゼミ的な活動を行なったり、さまざまに活動しています。

こちらが池谷先生も参加した『Learn by Creation 2019』のハイライト映像です。

もともと『Learn by Creation』は、どういったきっかけで始まったんですか?

先ほど話した『Most Likely to Succeed』の上映会を行った後、次のステップとして、あの映画から得たものを自分に落とし込みながら行動に移す人、そして学びをつくる人が増えるといいなと思ったんです。上映会が好評で、大きく広まっていったからこそ、視聴後の対話だけで満足するのではなく、実際に行動へと移すところまでを身近に感じてほしいという強い思いがありました。それをFacebookに書いたんです。

そうすると反響がすごかったと。

はい。すごく大勢の方が「私もやりたい」「同じ思いです」と共感の声を挙げてくれて。私の心の準備ができる前に、たくさんの人が賛同してくれたので、これはもうやるしかないなって。

そこから2019年の8月に開催されたイベントになったんですね。それはもうめちゃめちゃ大きな規模のイベントでした。

そうなんです。今となっては、自分でも「あんなの、よくできたな」って思います(笑)。孫泰蔵さんがすぐにスポンサーとして応援してくれることを表明してくれて、海外からスピーカーも5人くらい来ていただきました。いろいろなご縁で、たくさんの人が集まってくれて。

確か2日間、2会場で2,500人くらい集まったんですよね。僕もハッカソンに参加しました。そこでやったのが、教育関係者とクリエイターをごちゃ混ぜにして授業をつくるっていうプログラムです。半日くらいかけてやったんですけど、もうめちゃめちゃおもしろくて。「あ、これを学校でやればいいんだ」って気付きました。どうしても学校の先生って「教科書で授業する」ってアイデアが浮かびがちなんですけど、そこにたとえばユーチューバーがひとり入るだけで、発想がガラッと変わるんですよね。

学びの本質というのは
自分たちで意味を
つくり出していくこと

Theme2

受験教育の中で失われた“学ぶ楽しみ”。
海外でのアンラーニングを経て……。

そもそもエミさん自身はどういった教育を受けてきたのか、それがとても気になっています。

私はバリバリの受験教育を受けてきた人間なんですよ(笑)。両親から「この子を医者にする」という構想のもとで育てられて、小学校2年生から学習塾に通っていました。

えー! 意外ですね(笑)

そうなんです。とにかく「テストの点数をとることこそが勉強だ」みたいに叩き込まれて、詰め込み学習というか、“受験術”みたいなものを身につけることを目的に勉強をしてきました。もちろんそのおかげで、現役で志望する大学に入学できたとは思うのですが、代償として、“学ぶ楽しみ”を失ってしまったと感じています。特に海外のグローバル企業で働いた時にはとても後悔をしましたね。

後悔……ですか?

はい。アメリカのトップ企業の優秀な人たちって、さまざまな分野にとても深い造詣を持っている人が多くて、しかもそれは周りの人や先生から教え込まれたのではなく、それぞれが主体的に学んだ結果なんですよね。今でいう探究的な学び方というか。それを当たり前のように実践してきた彼らとの差をまざまざと見せつけられました。

なるほど。でも日本の教育は今なおそこから抜け出せていないかもしれません。

結局はバランスの問題だと思いますよ。旧来からの受験教育、つまりは英語だったら「すごく語彙がある」とか、数学だと「計算が早く正確にできる」とか、そういったことにもいい部分はたくさんあると思います。でも日本においてはそっちに偏りすぎているのかもしれないですね。「テストで点をとることが正しい学びだ」っていう価値観に偏りすぎたというか。その価値観って、一度身につくと崩すのが本当に難しくて。私も20代前半に、自分のこれまでの学びをアンラーニングするために、ものすごく長い時間がかかりました。

確かにそのアンラーニングって、かなり強いインパクトがないとできないんですよね。僕自身も抜けきれていないかもしれないし、特に日本の学校の先生には、ほぼ無理なことなのかもしれません。僕の場合は、オーストラリアの学校で教えた経験や、こうやってエミさんをはじめ、外部の色々な人とたくさん交流をする中で、少しずつやってきました。

そうですよね。だから『Most Likely to Succeed』を観ても「でもこれって、アメリカだからできることでしょ?」と感じる先生は少なくありません。なぜならあの映画で描かれているものは、旧態依然とした伝統的な教育のカタチがいいと信じ込んで取り組んでいる先生方にとっては、脅威の存在ともとれるから。

はい。そう感じる先生もたくさんいると思います。

そうすると「あれはアメリカだから」って言っておいた方が気持ちが楽なわけです。そんな中で、あの映画にある気づきを積極的に取り入れようとしている池谷先生たちの取り組みは本当に尊いと思います。追手門さんがそれをすることで、日本の子どもたちだって、“知の探究”ということに、こんなに楽しそうに取り組んでいるんだってことが全国に広がっていくでしょうし、そうなれば多くの先生たちが「あ、これって外国だけの話じゃないんだな」って感じるようになって、教育全体が変わっていくと思います。

間違いないですね。今、そういう方向転換をしている先生や学校も増えています。

その変化って、絶対にトップダウンでは起こりません。大事なのは現場です。教室での本物の体験や刺激を通して「時代はちょっとずつ変わっている」「子どもたちが、こんなにいい表情をするんだ」っていうことを先生自身が感じることがとても大事なんですよね。さっきも言ったように、私の場合はグローバル企業で働く中で、ものすごく強烈な体験をしたわけですが、すべての人がそういう体験をできるわけではありません。だから大切なのは、教室の中で子どもたちの表情が変わってくることです。それこそがもっとも大きなレバレッジになるんじゃないかなと思いますね。

こちらの映像から『Most Likely to Succeed』の上映会の様子がわかります。

もう少しエミさんの経歴の話をさせてください。大学を卒業した後に海外の企業に勤めて、そこからどのように今へとつながっていったのですか?

はい。大学院の前後に経営コンサルティングの仕事をしていた頃、インターネットが普及し始めたんですね。こう言うと、だいたいの年齢がバレてしまいますけど(笑)。これが私にとって、もう目から鱗で。インターネットを使うことで、世の中がいい方向に変わっていくんだろうなというワクワク感が止まらなくなりました。その後アメリカでのITバブルがハジけそうな時期に差しかかって、これから波に乗ってくる日本で仕事がしたいと感じ、帰国してエキサイトという会社に入ります。

ってことは、それが2000年くらいですか?

だいたいその時期ですね。エキサイトの後はアマゾンのマーケティング部門や書籍部門で働きました。そうやってインターネット業界の事業会社をいくつか渡り歩いたあと、Peatixを共同創業し、サービスをリリースします。それが2011年ですね。今ではまた27カ国で利用可能となっており、1000万人を超えるユーザー様にご登録をいただいています。

海外でのお勤めをする中で、それまでの価値観が大きく変わったと話す竹村氏。
同じく池谷先生も、1年間にわたる海外の学校での勤務がアンラーニングにつながったと語ります。

改めてすごい経歴ですね。そんなエミさんが、どんな経緯があって教育と関わることになったんですか?

はい。実は、仲間と起業をしてスタートアップを経営する中で、欧米と比較して日本はとてもスタートアップが少ないことに疑問を感じていました。しかも女性の起業家や経営者、国内だけでなく世界市場でも戦うスタートアップとなるとさらに稀有なんですよね。あと後進の育成に貢献したいという思いで、ビジネスコンペの審査員やメンタリングなどにも取り組んできたのですが、企業や行政による手厚いバックアップがある割に、若い人達の反応が薄いことにも疑問を持りました。それが教育に思いを馳せた最初のタイミングだったと思います。

なるほど。

また同じ時期に、社会の課題を解決しながら、企業としても持続可能な取り組みをする、つまり今でいうSDGs的な取り組みに関心を持って、ソーシャルビジネスを目指す起業家を応援するブートキャンププログラムみたいなものも2年間ほどやりました。でもやはり起業家が思ったほど集まらない。だから大学生に対して、起業することの意味や価値、素晴らしさアピールするのがいいのかなと思って、実際にそういう活動もやってみたのですが、大学の先生から「大学だともう遅いよ」って言われてしまって。

大学生にもなると、ある程度の価値観が出来上がっていますもんね。

そうなんです。まだ頭が凝り固まらない小中高っていう段階が大切なんだと痛感しました。ちょうど自分の子どもも「小学校が楽しくない」と言い出している時期だったことも関係しているかもしれません。そこから子どもたちが本当に楽しいと感じられて、自分自身のことを世の中に発信したくなるような教育って、どういうものがあるんだろうっていうのを考え始めたんです。

それが教育に関わるきっかけになったということですね。

そうです。まずは私が海外の生活の中で得た経験や知識を、自分の手元だけにおいておくのはもったいない気がして、ブログやSNSで発信することから始めます。その過程の中で、『Most Likely to Succeed』に出会い、私はマーケターとしても仕事をしてきたので、この映画を普及させたいという思いを抱くようになりました。そして新しい学びを日本の学校に伝えていく方法をいろいろと模索する中で、2016年に『FutureEdu』の立ち上げに至ったんです。

大事なのは教室の中で
子どもたちの表情が
変わってくること

Theme3

中の人と外の人との役割分担で、
最大限のクリエイティビティを発揮する。

エミさんは今、自分を教育業界の人だと認識していますか?

それは難しい質問というか、まず前提として「教育業界」という線引き自体にピンときていないかもしれません。というのも、私は世の中のすべての人が教育に関心を持つことが、人生の楽しさにつながると思っています。そもそも学校の中にいるのか、そうではないのか、みたいな境界線って、近代社会の中で人工的につくられたものですよね。そんな枠にとらわれずに、もっと多様な関係性の中で学び合うことを応援したいなと思っていて。だから業界内の人なのか、業界外の人なのか、そういう意識はないですね。

すごく同感です。ただ学校の中にいる人は、その境界線を引きがちなんですよね。教育関連イベントの報告書なんかを見ても「教育業界00% / 教育関係以外の人 00%」みたいな分け方を必ずしています。多くの人が約150年も前にできた「学校教育」という枠にずっととらわれているというか。その結果、とても小さなコミュニティができてしまって、外を見ずに過ごしてきた先生がたくさんいます。

はい。そうだと思います。というのも、イノベーションって多様な人が集まった方が起きやすいですよね。なので、Learn by Creation などのイベントでは、学校関係者や行政、保護者、一般社会人、学生など、多種多様な人が、テーマに関心を持って集まるということを大切にしています。

僕はそんな教育業界の現状を変えたいという思いが強くあるんですが、その一方で、よく聞かれる「学校という環境をもっと開放して、より大きなコミュニティ、つまり社会全体で生徒たちを学びに向かわせたらいいんじゃないか」という意見には完全には同意できない部分があります。

おっしゃる通り、社会全体で学ぶとなると、前提条件が大きく違ってくるので、教育の提供方法や仕組みといったシステム設計からしっかりしないと、持続的には機能しない可能性が高いですよね。

そうなんです。もちろん枠を閉じたいというわけではありません。エミさんをはじめ、いろいろな人と一緒に仕事をするのは本当に楽しくて。でもやっぱり『学校』という枠はすごく意識してしまうんですよね。その理由は自分でもあまり分からないんですけど(笑)。最近は「学校の先生という仕事は、今後なくなる」なんて声が聞かれて、確かに「教科を教える人」としてはなくなるかもしれません。とはいえ、毎日学校で生徒たちと接して、彼ら・彼女たちがどういった精神状態で、どんな感覚で生きているのかを把握しているのって、学校の先生だと思います。場合によっては家にいるより長い時間を過ごすのが学校なわけですから。

「外か中か」は意識したことがないと話す竹村氏。

特に僕が担当している「探究」という教科においては、学校の外にいる人たちが用意したプログラムを積極的に導入すればいいという意見もありますが、それをそのまま授業に使っても絶対に学習効果は上がりません。毎日、一緒に過ごすことで、生徒たちのことをきちんと理解している先生が、個々の特性に合わせてプログラムをアレンジしないといけません。それができるのは、現場の先生しかいないはずです。

素晴らしいですね。学校という学びの場を、子どもたちにとって意味深いものにしようと思った時に、現場の先生たちが、まずは学校という枠の中でクリエイティビティを最大限に発揮しようと考えるのはとても真っ当だと思います。

ありがとうございます。もちろんエミさんがいう「学校の中にいるのか、そうじゃないのか」っていう線に捉われない考え方も理解はしています。でも学校の先生という立場としては、やはり学校という枠も大切にしたいというか。ただ僕はその枠をすごく飛び出した活動もたくさんしているんですけどね(笑)

「中か外か」にとらわれず、常に横断しつつも、中へのこだわりも捨てたくないと話す池谷先生。

ちなみに『Most Likely to Succeed』ですが、僕の感覚ではものすごいスピードで日本国中に広まっていったように思います。やはりマーケティングの世界からきたエミさんだからこそできたのかなと思っていて。

そうですね。たとえばPeatixをリリースした時もそうだったんですが、他により優れた機能を持ったサービスが出てきたら、そっちにスイッチするといったようなものではなく、もっとユーザーと深い関係性を築けるようなサービスを目指していました。『Most Likely to Succeed』も考え方は同じです。広める側である私が「この映画、すごくいいから観てよ!」ってプロモーションをするのではなくて、上映会の中で『対話会』というものを必ずセットでやっていました。

上映後に視聴者同士で意見交換をする場ですよね。

そうです。互いに共感し合う素晴らしさを感じてもらえれば、「自分もこういう場をつくってみたい」と思う人が増えていくはずですよね。そうなれば、私ひとりが全国行脚をしながら日本各地で上映会をしなくても、映画そのものの良さや、そこから得た刺激を共感し合う良さを広げていってくれる人が勝手に増えていくのではないかという仮説を立てて実践してみました。その結果、口コミだけで全都道府県で上映会が開催されるまでに動きは増長されて。「映画を観てもらう」というより、むしろ「映画を通してコミュニティをつくる」ということを狙ったというか。それが功を奏して、本当に多くの人に映画を届けることができましたね。

まさにそれなんです。今ではエミさんのその考え方自体が広まっていったと僕は感じていて、たとえば教育関係の研修においても、昔だったら「みなさん、これを受けたらどうですか? こういう学びがありますよ」っていう主催者側の視点での情報が届けられるだけだったんですよね。でも最近だと、エミさんがやっている『ブリッジラーニング』や、『Learn by Creation』にも参画されている藤原さとさんが主宰される『Learning Creator’s Lab』なんかも、まずコミュニティがつくられて、そこから広がっていくのが主流になっているんですよね。この流れの口火を切ったのが『Most Likely to Succeed』だったと思います。

世の中のすべての人が
教育に関心を持つことが
人生の楽しさにつながる

後編はこちら

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