追手門学院中学校の総合的な学習の時間
追手門学院の「総合的な学習の時間」についてはコチラを参考に!
毎回、前提として本校の総合的な学習の時間について提示しておきたいと思います。
中学1年生から高校3年生までの6年間を計画し、中学段階では特に楽しみながら自分自身への感度を高め、自分にしか創造できないことに気づき、「自信」をつけ、「自己肯定感」を高めることを目的としています。信じるための、肯定するための「自分」を知ることです。
中学全体の取り組みもそうですが、クリエイティビティに特化できる授業があってもいいのではないか、学校を最もクリエイティブな場にしよう、ということで楽しんでいます。ここで養った、いやここで忘れずに温めることができた創造性が将来生きる!
授業の基本は「まずはやってみる、そして考える」。身体、心を働かせる経験を振り返ることで自分や、他者との関係性に気づいていきます。
中学の経験テーマは、1年生:五感、2年生:記憶、3年生:想像です。ということで、なんとなく50個あれば3年間持ちそうだなということでやり切ります!お付き合いよろしくです。
記念すべき第1回は「対話型鑑賞」!
対話型鑑賞
対話型鑑賞を学校で
対話型鑑賞、VTS(Visual Thinking Strategies)は、1980年代に始まったとされる、子ども向けの鑑賞方法です。鑑賞するものがどのくらい偉大で良い絵なのかなど、その絵の価値を判断したり背景を読み解いたり考えたりするのではなく、VTSでは、それをみて自分はどう感じるかなどの気付きにフォーカスしていきます。
小学生を対象に開発された対話型鑑賞では、次ような質問を、先生がファシリテーター役として進めていくことが基本とされています。①この絵の中で、どんなことがおこっていますか?(What’s going on in this picture?)、②あなたは、何をみてそう言っているのですか?(What do you see that makes you say that?)、③もっと発見はありますか?(What more can we find?)。
絵の中に自分は何をみているのか、それに対して感じること、考えることへと気づきが生じていきます。対話を通じて他者の視点が入ることによって受けた刺激がその場の世界を広げ、答えのない、自分たちの感覚で生み出すコミュニティが学びの空間へと変わっていく。
オリジナルで
美術館で実施されるカリキュラムから、学校で実施することを目的として開発された手法、さらにはあらゆるシーンで応用されるに至るまで、目的に応じた方法がさまざま開拓されています。
私たちが大切にしていることは、その歴史を捉えた上で、肩肘張らない自分たちなりの対話型鑑賞を行うことです。生徒たちの反応や振り返りを見ながら、実践を積み重ねるのみ!
あらゆる場所で対話型鑑賞。Art Communication Project.
対話型鑑賞の目的と実践
クリエイティビティは正解のない世界で
対話型鑑賞では、無意識の自分や気づきにくい自分の細かい感覚などが表出する可能性があります。自分に対して向けたことのないベクトル、自分でも何が出てくるか分からない面白さ。その時々の自分を形作っているコアな部分や、それを支える経験などが姿を見せ、クリエイティビティに溢れた時間が流れます。
また、対話を通じて他者と共有することで違いや正解のない世界を実感する。これが中学1年生の早々に取り入れているわけです。知識に偏ったモノの見方、考え方から脱し、ヒトの感覚、記憶、想像力のパワーを知るいい機会だと思います。
1学期には自分が落ち着く感覚を探究しますが、視覚の単元で大活躍です。授業ではいわゆる絵画を鑑賞することがベースですが、写真や自分たちが作成した作品を対象にするなど応用しています。鑑賞しながら生徒は「どこに目がいって、どう感じたのか」を自問自答したり、共有したりする。それだけです。
私たちも参考にした、末永幸歩さんの著書「13歳からのアート思考」にあるアウトプット鑑賞も超絶オススメです!コチラは中学3年生や高校でも取り入れていますので、また別の機会に書きます!
子どもたちの学び
もう少し具体的な方法を紹介すると、まずは1-3分間ある絵画を1人で鑑賞し、たくさん「どこに目がいって、どう感じたのか」を探します。
次にペアやグループでシェアしていく。最初はすぐさま思い浮かんだり、喋るということができない生徒もいるので、1人で時間を過ごしてもらうことにしています。この時間もマインドフルでいい感じですよ。
徐々に、自分のエピソードと結びつけて話したり、複数の絵画の中から選んで、同じものを選んだグループで対話型鑑賞をしてみたり、先輩が作った作品でやってみたり、質問を変えてみたり。自分たちでも驚くほど「自分」が出てくることに気づいていきます。
子どもたちの振り返りの中には、
「自然や、水色などの暗いと明るいの間ぐらいの色が落ち着きます」
「なんとなく過去のものっぽいやつが好き」
「1番最初の絵画はグチャグチャしているけど、よく見るととても落ち着くいい絵画だなぁと思いました」
「少し余白がある所、作品を誤魔化している所が落ち着くポイントだった」
というような発見や、
「見る目が変われば見え方も変わると思った」
「自分はその個性の描かれた作品を見て、同じお題でもこんなに人によって表し方が違うんだな。なんか落ち着くな。と思いました」
など自分の中に起きた変化や、多様性を実感し自然にお互いを尊重する空間を創ってくれそうな予感すらしましたよー。