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表現科 馬場祐之介

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TEACHER

2025.03.04UP

大人の“本気”が子どもを変える。理想の学びと、理想のチームに向かって。

PROFILE

馬場祐之介 表現科

  • 出身

    神奈川県横浜市

  • お気に入り

    トマト、ねこ、川とか海とか沿い

  • 授業でもっとも大切にしていること

    心を使うこと

Theme1

言葉の“遅さ”から、演劇の世界に。
それを教育につなげていくために。

学生時代、僕は学校や先生のことが嫌いで、「先生になりたい」とはまったく思っていませんでした。親と積極的にコミュニケーションをとる方ではなく、また学校にも高圧的な指導が残っており、周りの大人はほとんど信頼していなかったと思います。そういう自分の声を溜め込んでいた高校時代に、自分が見ている世界を他者に伝えられるような仕事に興味を持ち、なんとなくメディア系の就職を意識しはじめました。そんな中で、規模は小さいものの学校の先生も自分の声を発信できる仕事だと感じ始めたのが、現在につながるきっかけです。当時「なんで学校に通うんだろう?」「なんで先生の言うことを聞かないといけないんだろう?」とたくさん疑問を抱えていたことも、結果的に教育を学ぶモチベーションになっていたと思います。

大学に入ってから、ある転機が訪れます。それはベースとドラムだけで即興の演奏をするアーティストのライブを観に行った時のこと。それまでの僕は本ばかり読んでいて、言葉で自分の考えや感覚を表現することが得意だと思っていました。しかし感覚的に進んでいくそのセッションを見て大きな衝撃を受けます。刺激をインプットしてからアウトプットするまでのスピード感や、言語よりもよっぽど肉体的なコミュニケーションに圧倒され、「言葉は身体に対してとても遅いのだ」と絶句しました。そこから言葉への信頼を失って一時的に本を読むことができなくなり、また他の表現を知らないとどうしようもないんだと切迫するような感覚を覚え、それまでは触れたことのなかった前衛的な映画や絵画、建築などに意識を向けはじめます。その中で出会ったのが身体と言葉の関わりを直接的に扱うことのできる演劇でした。そこからバイト代をすべて注ぎ込んで、年間100回以上は劇場に足を運ぶ生活を送り、「教育と演劇」そして「身体と言葉」が大きな思考の軸となっていきます。

大学卒業後は自分が通っていた頃はとても嫌っていた母校に戻り、昼間は非常勤講師として国語を教えながら、夜は塾講師、休日は演劇のクリエーションに参加するという生活を送ります。しかし2年ほど経つと、とにかく忙しくなって、教育と演劇の接続をうまく考えられなくなり「このままでいいのかな」とぼんやり考えるようになっていきました。ちょうどその頃、表現教育の第一人者であり、今は閉鎖されてしまったこの学校の『表現コミュニケーションコース』を立ち上げた一人である石井路子先生のSNSで、教員募集をしていることを知ります。石井先生のことはもともと知っていて、僕が大学時代から繋げ切ることのできなかった「演劇」と「教育」の接続を学校現場で、しかもかなりの強度で実践している方でした。そこから話はトントン拍子で進み、2020年の4月から表現コミュニケーションコースの教師として働き始め、同僚と生徒たちから本当にたくさんのことを学びながら現在に至っています。

「教育と演劇」
そして「身体と言葉」が
大きな思考の軸となった

Theme2

教師がストレスから逃げず、本気に。
その姿は生徒に必ず伝わっていく。

現在は中学で担任としてHRと道徳、探究を、また高校の『創造コース』の表現、他のコースの探究を担当していて、さらに国語の授業を受け持つ年もあります。大学時代と同じようにさまざまな教科・分野を横断しつつ、「自分を表現すること、他者の表現を真に受けること、そうした集団をつくること」を、それらの“つなぎ”にしました。例えば現代文において、受験対策としての授業展開、つまり「文法を分かりやすく教える」といったことはもともと得意なのですが、この学校に来てからは一切やっていません。その理由は「こうやれば、こう解ける」といった受験に向けた小手先のテクニックは、生きる上で大して重要ではないから。そもそも現代文の教材となるテキストにももちろん書き手がいて、その人の「表現」です。受験で使える方法論を覚えたり、僕が分かりやすく解説したりするよりも、生徒自身が頭を抱え、身体をモゾモゾさせながらそのテキストを100回読む方が絶対的に価値があって、それをどうやって促すかこそが教師のやるべきことです。当然そこに知識や技術は欠かせないこともありますが、それは答えを出すためではなく、いかに他者の表現に付き合う態度を持続していくかに関わるものでなければなりません。そしてそれは受験テクニックを個々に習得していくよりもよっぽどめんどくさくて、しんどいこと。だからこそ、その価値を分け持って、共に学べる集団づくりも重要だと思っています。

「誰もが自分を表現し合える集団」という理想に向かって教師がまずやるべきことは「本気になること」です。大人が誰よりも本気になって、それを見せなければ子どもたちの本気の基準は絶対に上がりません。かつての『表現コミュニケーションコース』ではそれができていて、先生たちが誰よりも笑い、誰よりも泣いて、誰よりも怒って……といった環境でした。今はそれを見せない先生が多いから、生徒たちはどんどん斜に構えて、スカしてしまう。そうならないように常に意識しながら、生徒たちと向き合わなければいけません。

昨年卒業した生徒は「ここではみんなが自分の話を聞いてくれた。それは表現の先生たちにちゃんと自分の話を聞いてもらった人たちのコミュニティだったから」と卒業文集に書いてくれました。僕らが目の前の生徒と本気で向き合う姿は、絶対に伝わっていくと信じています。そうやって最初は教師が生徒たちの繋ぎ目になりながら、最終的には生徒たちが自分らでその環境をつくれるようになってほしい。それが僕の願いです。最近の教育では「楽しさ」がとても重要だと考えられていますが、とはいえしんどいことはしんどくて、楽しかった帰り道にどっと疲れを感じるように、心や身体を大きく動かすためには、必ず“ストレス”が伴うもの。それは自分と向き合うのも、人と関わるのも同じです。だからこそ僕たちがそこから逃げずに、誰よりも汗をかくことを楽しんでいたいですね。

目の前の生徒と
本気で向き合う姿は、
絶対に伝わっていく

PAST 過去

めんどくさがりのくせにいいカッコしい。意志とかはそんな強くないけど嫌なことはたくさんあるから結局自分なりにやる。今も同じです。

PRESENT 現在

2024.07.10

FUTURE 未来

死ぬまでにバンド組むのが夢です。

FAVORITES

アトリエ0

表現が生まれる場所。つまり、表現が受け取られる場所。絶対に絶やしたくないわたしたちの家です。

MY ITEM

ADO Air 28

自分の身体を世界に晒して運びながら思考したり、思考から解放されたり。移動することに一番自由を感じるかもしれないです。

VOICE

01

教育業界のココを変えたい!

ほんとに僕らがいいと思える社会のあり方をちゃんと思って仕事したいですね。

02

追手門学院中・高等学校にコレを導入したい!

選択制の授業。生徒の「やりたい」を前提とした集まり。そこでの活動を継続しながら、クラスというランダム性の高い集団と向き合うことも諦めずにやっていきたい。

03

生徒や保護者のみなさまに言いたい!

めんどくさいって言い合いながら一緒に生きていきましょう。

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