異なる学年で作り上げられる班の中で
互いの学びを深めていく

  • 追手門学院中・高等学校 / 保健体育科
    森田 美希
  • 追手門学院中・高等学校 / 数学科
    住谷 研

代々引き継がれてきた縦割り教育は
丸郷活動として独自に進化を遂げています

「丸郷」の名称がスタートしたのは2017年でした。この縦割り教育の活動自体は、大手前から1967年に茨木に移転して茨木の中学校(1クラス)がスタートした翌年から始まり、今もずっと受け継がれているものです。本学院創設者である高島鞆之助(トモノスケ)先生の出身・薩摩藩伝統の「郷中(ごじゅう)教育」を基にしています。
現在は行われていませんが、「見学旅行」や「スキー訓練」など、かつての宿泊行事でもその取り組みが行われていたそうです。今の「丸郷活動」はその発展形といったところでしょうか。異なる学年で作り上げられる班の中で、上級生が下級生をリードしながら話し合ったり、行動を共にすることで互いの学びを深めていきます。

新入生歓迎会やサイエンスキャンプ、Project Adventure
さまざまな行事を通して実践される丸郷活動

新年度初めの丸郷活動が新入生歓迎会です。4月末にある行事の為、例年準備期間が約2週間程度しかありません。3年生の班長たちが中心となり毎日放課後や昼休みに集まって、行事を上手く回すためには何が必要か、班が仲良くなる仕組みをどう作るか、それぞれの班のメンバーにどんな役割を割り当てるかなどを決め準備を進めていきます。事前に班のメンバーの顔合わせや新入生へのオリエンテーションなども行い、下級生のことを気遣いながら入念に準備していきました。歓迎会の当日はあいにくの雨で、想定していた動きから大きく変更が起こりましたが、それぞれ臨機応変に動いてくれました。

そしてプロジェクトアドベンチャー(PA)は、「丸郷活動の醍醐味である異学年の協働をさらに進化させ、その刺激を受けて新たな自分に出会う取り組みの一環として、今年初めて実施したイベントです。活動を通して力を合わせて仲良くなるという趣旨のもと、共同作業が不可欠な4つのゲームを行いました。
「パイプライン」というプラスチックのハーフパイプでビー玉を転がしてつなげていくゲームや「マシュマロリバー」「絵本のシーン並べ」「フラフープくぐり」など、どれも創意工夫や協力を必要とするゲームです。教員がファシリテーションしますが、予想をはるかに上回るレベルでできていたと思います。終わった後に各班で振り返りも行いましたが、班長たちが細かいところまで見ていることに感心しました。うまくできなくて落ち込んでいそうな子に声をかけるなど、態度や目配り、いろいろ考えているなと感じました。PAは本当にやって良かったと思います。

日常の中の清掃活動・学び合い…
そこで生まれた新たなコミュニティは
生徒たちの自信と自覚へとつながっていく

以前は、行事の時に実施するだけだった丸郷活動を、もっと日常に取り込めるよう増やすようにしています。例えば、週に3回丸郷班での掃除、OM(追手門モジュール)で25分間の学び合いなどです。班によってそれぞれの雰囲気で活動を楽しんでいます。学ぶ教科を指定しているわけではないので、それぞれがやりたい学習を進めていく中で、自然と上級生が教えている班があったりします。また雑談をしているように見えて、普段の学習方法や宿題の量、勉強の仕方などを話す機会になっていたり、班長が「喋らずに勉強しよ!」と班員に呼びかけていたりとさまざまな様子です。

同学年との関わりという小さなコニュニティーだけでなく、より多くの人と共に生活する事で、今まで出会わなかった価値観に触れる機会になり、他者を知るという経験が、中学生世代の生徒たちにはとても大切な時間だと思います。また、同学年といる自分では「自信が持てない、自分がやらなくても・・」等控えめに生活している生徒にとっても、丸郷はいい時間だと思います。上級生にとっては「新たな自分」と出会い、成長する場であり、下級生にとっても違うコミュニティが広がり、憧れの先輩や「こうなりたい!」と思える存在を得る機会になります。
日頃から丸郷活動をすることで先輩後輩の関係が出来上がり、中1からの成長曲線がすごく大きいのも異年齢交流が増えることの嬉しい面です。社会に出てからも同学年だけで仕事することはないので、早いうちからそういう経験をすることって大事だと実感します。