数学を通して養う
考え続ける粘り強さ
数学科では、問題を通して、生徒が考えることを大事にしています。問題を解決できたときの嬉しさや楽しさを実感して欲しいというのは勿論のことですが、それだけではなく、生徒一人ひとりが考える過程で、新たな疑問が生まれること、こうすればうまくいくかなと予想や方針を立てること、より良い方法はないかなと問題を発展させることも数学の楽しさだと考えています。
生徒なりに問題に対して一生懸命考えることで粘り強さも身に付けて欲しいと考えています。
50分の授業時間の中で、生徒が考え活動できる時間をなるべく多く確保するようにしています。例えば、教師が説明する時間をできるだけ短くすることや、生徒同士が教え合いをできる環境を作るなどの工夫が挙げられます。生徒を見ていると、数学は特に得意・不得意が大きく分かれる教科であると感じています。
数学が好き・得意な生徒は他者に教えることでより一層理解が深まりますし、苦手な生徒は友人に教えてもらうことでわかることが増えます。また、生徒が自立した学習を進められるように「教えない授業」を実践している数学科教師もいます。
学びを他領域で活かす
グラフィックアートプロジェクト
授業で学んだ数学の見方・考え方を活用し、生徒一人ひとりが考えること・悩むことを楽しみながら取り組み、その経験の中で得た、学びや気づきを次の学習や日常の中で活かすことができる、ということを数学科のプロジェクトの定義としています。
最近の実例を挙げますと、高校3年生で「グラフィックアートプロジェクト」と題したプロジェクトを行いました。3年の授業で2次曲線を学んだので、グラフ作成ソフトを利用して絵を描きました。色を塗るためには高校2年生で学んだ「領域」の考えを利用していきます。中には、授業で扱っていない曲線を調べて利用する生徒もいて、今学んでいる内容から発展して自主的に取り組んでいました。制作の過程では、絵を回転・動かすにはどうしたらいいかなどの新たな疑問も生まれていました。個人のプロジェクトでしたが、友人と共有して刺激を受け合い、より良いものを作るためにはと試行錯誤することで面白い作品ができました。プロジェクトでは、制作を通して数学の楽しさを感じられるものの作成を心掛けています。
個の気づきが成長に繋がり
他者への刺激へと広がっていく
リフレクションでは、授業の内容が理解できているかを確認しています。授業を理解できているかの確認だけでなく、授業の取り組み姿勢や目標に対してどうであったかの振り返りを行います。振り返ることで、生徒自身ができたこと・良かったところの確認のみならず、次に向けて行動の見直しにも繋がります。また生徒のリフレクションを読んで、生徒自身が気づいたことなどを次の授業で他の生徒と共有することもあります。クラスメイトの振り返りから、刺激を受けて良かったところを真似する生徒も出てきます。
私は常に、授業から数学を学ぶ楽しさを知って欲しいと思っています。数学を入試で使わないとか、大人になって使わないから数学は必要ないと思っている生徒も少なからずいます。しかし、数学を学ぶことで、条件を読み取り、それをもとに筋道を立てて考える力が養われます。これは数学に限らず、日常生活でも応用できる論理的思考に繋がります。また、一つの問題に対してこれまで学んできた内容をどのように活用するかを考えることで、粘り強さも身につけて欲しいと思っています。学んできた知識や姿勢が、知らないうちに生活に活かされているのが理想ですね。