皆で楽しめることを大切に
生涯スポーツも意識した授業展開を
保健体育は、大きく保健科目と体育実技に分かれていますが、どちらにも共通して言えることは、その場で終わってしまう知識や技術の習得ではなく、「今後に繋げる力をつけること」を意識して指導にあたっています。
体育分野では、いかに皆で楽しめるかという点を大切にしています。運動は得意・不得意が分かれる科目ですので、苦手な生徒をどう肯定感を持たせながら授業を展開していくかを常に考えています。安全で楽しく、生徒たちが自らの課題を発見し、そこに向き合っていくかが重要です。
実際の授業では、気温が上がってくるGW明けからはWBGTの計測を行い、運動に適した環境であるかを見極め、休憩や水分補給なども適宜はさんで、安全を第一に考えながら実技科目を行います。2学期開始当初には、まだまだ暑い日が続くので、教室で体育理論の授業を行っています。また、2学期末の寒くなる時期には心拍トレーニングの一環として「マイペース走」を取り入れています。距離やペースを教師側が決めるのではなく、12分間の中で、心拍数を目安とし各自で設定した目標で走る持久走をマイペース走と呼んでいます。計測器を置いて、各自が周回時の自身のタイムを把握することで目標を設定し、12分間同じペースで走ります。
高校3年時には、今年度から「選択授業」を導入しました。各生徒が全7種目から前期、後期それぞれ1種目を選び、週に2コマの「選択体育」を男女共習にて実施しています。種目は、サッカー・ソフトボール・テニス・バレーボール・バスケットボール・卓球・ダンスの7種目で生涯スポーツに繋げ、だれもが楽しめるような種目に設定しました。
保健科目では協働的学びで
学んだ知識を生きた知恵へ昇華
一方で、より日常生活に密接した内容を取り扱う保健分野では、生徒たちに学習内容を身近なものであると認識させることで、興味・関心を引き出し、より深く学ぶことを重視しています。
例えば、1年生に関しては「自分の体に関すること」を中心に学んでいきます。感染症・感染症対策・喫煙・飲酒・薬物乱用などのテーマを取り上げ、それらが自身の体に及ぼす影響等をグループワークやペアワーク、他者との対話を通して考えていきます。経験や実感をもとに日常生活に落とし込みながら考えることで、生活に活きる授業を心掛けています。興味関心のある内容をピックアップし、新聞作りやスライドを作成し発表するなどのアウトプットも行います。個人課題だけではなく、協働的な学習もバランスよく取り入れています。発表した内容を他者と共有・意見交換することで、さらに知識を深め、その知識をどのように活かし、日常生活に結びつけることができるのかを目的としています。
受験科目ではない
でも生活に直結する科目
評価という部分の話をしますと、観点別評価となっており、実技の結果だけではなく、レポートやグループ学習など項目を細かく見ながら決定していきます。授業中に見受けられる課題との向き合いかたやプロセスも注視しています。
しかし正直なところ、体育系の進路を目指す生徒以外、ほとんどの生徒にとって保健体育は受験科目ではありません。しかし、学校や進路を飛び越えて、一生関わっていく自分の体や健康、生活に直結していく科目だと思っています。
だからこそ、体育実技では運動の得意・不得意は関係なく、記録の伸びや、動画などを使って成長を可視化することによって、本人が成長している実感を得ることにより、楽しさやモチベーションの向上に繋げることが大切だと考えます。そういった意識が生涯スポーツにも結びついていくからです。保健では、先程お話しした事例のように、日々の生活の中での課題について学習中の単元とリンクさせ、知識の必要性を感じながら興味を持って授業に取り組むことが、今後の生活に役立っていくのだと思います。きちんとした知識から、生活の知恵を身につけてほしいですね。