様々なテーマに対して
自分なりの考えを持つ、
自律した学習者を目指して
社会科では、「生徒一人ひとりが自律した学習者になれるように」ということを特に大切にしております。そのような生徒を育成するために、「個別・協働・プロジェクトの融合」と「等閑視をもたらす一斉指導の排除を目指す」こと、そして「次に向かうリフレクション」に力を入れて取り組んでいます。
具体的な授業を例に挙げてお話しします。例えば、「日本が中国にならった律令にもとづく国づくりを急いで進めたのはなぜだろうか。」を1時間の授業で導き出す答えのテーマとして教師が提示します。あわせて目標に辿り着くための「外的要因は何があった?」「戦いを後押しする和歌」など小さな問いも教師が複数設定していきます。生徒たちはグループワークを通して問いについて考えます。授業の最後には、生徒自身に価値判断をさせるような質問を投げかけ、生徒たちは自分なりの考えをまとめます。(また、実際に起こった出来事に対して、複数の資料を組み合わせて考察する。)最近の授業では、「百人一首の1番目の歌は、本当に天智天皇が詠んだのか?詠んでいないのか?様々な和歌から天智天皇の人間性を考察しよう。天智天皇の政治を評価する」というテーマに取り組みました。
学期を通して行う
教科書作りプロジェクト
創造コースの授業では、2学期をまるまる使って一つのテーマをプロジェクトとして扱いました。近現代を学んでいたのですが、まずは、そもそも近代国家が出来上がっていく過程をみていきました。日本では江戸時代までの地方分権が明治維新で中央集権となった。一方、フランスはどうだっただろうか。フランス革命の意図は?ちょっと出遅れたドイツとイタリアは、どういうふうに国が形作られただろうか。近現代というテーマの元に、日本のこと・諸外国の状況など多角的に見ていくことで時代背景をより深く理解し、様々な観点から物事を見ていきました。そして、近代国家を維持するために必要なものを考えた時に、「国を守る=防衛」に行き着きました。防衛のための強い軍隊を作るためには、戦前の教育(道徳)に繋がっていくわけです。そこで、「戦前の道徳教育」を振り返って学びました。翻って、そういう時代から変わった現在の日本ではどんな教育が必要だろうか、というような流れで授業を進めながら、現代の世の中に合った道徳の教科書を見開き2ページ考えて、各自で作ってみるプロジェクトを行いました。グループである程度は進めていって、最終的に成果物を作るところは個人課題とし、出来上がったものを回し読みしていきました。
こんな感じで、課題・テーマの設定から情報収集・整理・分析をして、最終的にまとめ&表現という作業を繰り返します。単元についての概念的理解・一般化された知識を習得するだけでなく、プロジェクトの成果物を通じて自分なりに構築した理解に到達することを目指しています。成果物を他の生徒と共有する中で、さらにフィードバックを得て、グローバリズムやナショナリズムといったトピックにまで考えが及んでいました。
社会科の学びは
人生を豊かにするための最強ツール
世の中にエンタメの楽しさには限りがあると思っています。例えば気になる映画の最新作や好きな漫画の新刊とかは、受け身で待つしかない。だとしたら、ただ待っているだけじゃなく、既存のものを自分で掘り進めることがワクワクに繋がるんじゃないかと思うのです。
大人になってから、歴史が好きになる人って多いですよね。それって、旅行に行く・映画を見る・美味しいものを食べるといった日常の行為全てが、社会科での学びに繋がっていることを実感するからだと思います。習得した知識が、日常の事柄や体験に結びついた時、感じ方や感動の幅が広がって、自分自身の世界が広がっていく。社会科の学びは、どれだけ掘り下げても尽きることがありません。文字や絵、写真で見るだけじゃなく、実際に行ってみることができますし、それこそ無限にあるから、一生かけても行き尽くせません。暇なんてなくなりますよ。そのことにより高校生の間から気づいたら、より能動的なエンターテイメントに繋がるように思います。その上、全年齢対象のコミュニケーションツールにもなります。社会科は人生を豊かにする最強のツールです。何事にも興味を持って、世の中の身近なことにどんどん触れていって欲しいです。