個別の思考や協働を経て、
自分なりの答えを導き出す

  • 追手門学院中・高等学校 / 国語科
    石川 貴士

個別の思考や協働を経て
自分なりの答えを導き出す

国語科の授業では、「文章や問いに対して、自分なりの答えを出すこと」を大切にしています。具体的には、個別に身につけた知識や思考で一つの問いに向き合い、それらを協働の場で共有し、もう一度個別に持ち帰って最終的に自身の答えに落とし込むというサイクルを授業の中で実践しています。

自分なりの答えを出す課程において、自身が深く考える事は必要になりますが、自分だけで答えが出ない場合は他者に頼ってもいいんです。とにかく最終的に「自分で」答えを出すということを授業では伝えたいと思っています。

そして、その答えをどのように表現するかという段階において、それぞれが持つ語彙力を存分に発揮し、豊かな表現力と個の感性を磨いていくことが理想です。その土壌として幅広く学べる環境を、授業の中で提供していきたいと考えています。ポイントとしては大きく4つです。知識や根拠に基づき筋道立てる論理的思考力、「読む、話す、書く、聞く」4技能の広さと深さ、豊かな表現力・語彙力、他者との対話から導く・自分の考えを伝える力、こういった力の育成を目指しています。

私は現在高校3年生の授業ばかり担当しているのですが、問題演習ひとつを取っても、今お話ししたサイクルやポイントを意識して実施することで、生徒たちが自らの学びを「自分のもの」にできる感覚は深まると感じています。

リフレクションに見る
生徒たちの成長

本校は、4つの学び(個別型学習・協働型学習・プロジェクト型学習・リフレクション)を特長に挙げて授業の中や学校生活に落とし込み、繰り返し実践しているわけですが、継続的に取り組むことによる生徒の成長は、教員の目から見ても明らかです。

例えばリフレクション。個別・協働・プロジェクト型学習で体験したことを内省し、学びの深化を狙ったものですが、学習内容のみならず、協働する他者、さらには自分自身について見つめ直し、新たな気づきを得ることで知識や自己理解を深めていっていると感じます。現在私が担当している高校3年生は、彼らが1年生の時から3年間ずっと担当しています。中高一貫の生徒に関しては5年間になります。それだけの期間見ていると、当然ですが、リフレクションの問いに対してのそれぞれの回答が、総じて具体的になってきていると感じます。初期の頃は、抽象的な答えだったり、上手く言語化できなかったりという生徒も散見されましたが、今ではこちらの問いかけが大雑把なものでも、具体的な回答をする生徒が随分増えたと思います。発達段階に関わるものももちろんあるとは思いますが、生徒たちの中に内省という意識が定着していることの表れではないでしょうか。

国語とは多様な価値観に触れ
自己と向き合うことのできる時間

「一般的に」や「客観的に」という視点を学ぶことを退屈に感じたり、窮屈な印象を持つ人も居るかもしれません。ちょうど高校時代の僕がそうでした。国語という科目は、よくそういった印象を持たれがちな教科かと思います。そんな人は思いきり文章で、自分の言葉で、自己表現をしてみればいいと思います。そこで違和感や物足りなさを感じたとき、「一般的」や「客観的」を学ぶことに大きな意義があるということに気づいていってくれればなとも思います。つまり他者の存在があっての自己であり、それは決して自己否定ではなく自己の再構築です。

文章や言葉を通して多くの価値観に触れ、自己と向き合うことのできる国語という時間の魅力を少しでも伝えられればと思っています。主観的に・俯瞰的に自分や他者を知る機会や自分軸を広げていってくれたら嬉しいです。