単なる知識でなく、
活きた知識の定着を目指す

  • 追手門学院中・高等学校 / 理科
    松井 祐也

単なる知識でなく、
活きた知識の定着を目指す

授業で学んだ事柄を受験勉強のための単なる知識として終えるのではなく、活きた知識として定着させることを目指しています。日常生活との関連性に意識を向けるような工夫を行い、今学んだことが自分たちの生活にどのように関わってくるのかを考え、より関心を高めていけるように授業を組み立てることを心がけています。日常生活の中でふと気になった疑問や関心を深堀していき、積極的に予想を立てたり、検証したりすることができるように成長したらいいなと思っています。

授業では、生徒に知識を伝達する前に「問い」を投げかけます。その問いは授業内容に直接的に関わるもの、間接的に関わるもの、どちらの場合もありますが、生徒たちが考え始めるきっかけにしています。答えを導けるかどうかではなく、自身で考えをまとめることができるか、クラスメイトと協働的に考え、思考を広げることができるかというプロセスの部分に重きを置いています。

私自身は、授業の単元に関連するような現象を見つけたら、それを写真に収めて生徒たちに紹介して見てもらう事もありますね。日常生活と理科が密接に関係していると感じてもらえたら良いと思っています。また、授業では最終的には答えや解法を伝えるのですが、なるべく生徒たち自身が答えにたどり着けるよう、サポートをするようにしています。

健康促進のための
CMづくり

理科では、プロジェクトを「日常生活における疑問や興味を、仮説・検証を通して論理的思考を養う能動的かつ連続的な学び」と定義しています。

昨年の創造コースでは、「体内環境」の単元を学んだ際に、自分たちの健康と繋げて考えてもらい、健康促進のためのCM作りを行いました。教科書で学んだ知識を踏まえて、例えば喫煙や飲酒と絡めて考えてみる。誰をターゲットにして、どんな内容・訴求の動画にするのか。内容を練って深めていく作業もありますし、CMですので画作制作の技術の部分もあります。全体で1ヶ月くらいかけて制作を行いました。

このようなプロジェクトはもちろんですが、授業内では協働的な学びを意識して取り入れています。グループワークを通して、生徒が教え合う中で、お互いの考え方に違いが見られる場面で特に成長を感じます。単に「考え方が違うなぁ」で終わるのではなく、なぜ考え方が違うのか、その原因を究明して自己の考え方をアップデートしていく様子が見受けられるからです。原因を究明しようと検証する様は、理科だけでなく、日常生活にも求められるクリティカルシンキングにも繋がると思います。同様に、リフレクションで自己分析を丁寧に行うことで、次の段階の課題を生徒自らが見つけ、努力を継続する様子にも成長を感じます。理解度を振り返ることで、漠然としていたものが明確に把握できるようになり、さらに周りの意見を聞くことで、気づく部分も増えていきます。協働とリフレクションを繰り返すことで、皆、自己分析が得意になって計画性を持って物事を進められるようになってきたかと思います。

知識欲は人間の特権
生活の質もアップデート

テスト勉強の一夜漬けなどは最たる例かと思いますが、丸暗記した内容は単なる知識でしかなくて、試験が終われば、段々と忘れていってしまいます。それは、私の目標としているところではありません。もっと言えば、10年後・20年後に、本当に必要になった時に役立つ知識を身につけて欲しいと思っています。だからこそ、単に教科書に書かれていることで覚えるのではなくて、その書かれている内容を具体的にどう扱っていくのか、実際に身近な問題に落とし込んで考えてもらうことを大切にしています。

知識はいわば食材に過ぎません。我々教師は食材を与えているだけでしかないので、それを彼らがどう調理するのかというところまで高めていきたいと思います。よく考えて、誰をターゲットにどんなレシピで調理するのか、そういう細かいアドバイスや問いかけを適宜行うことで、解像度を上げさせるってことをしつこくやってきたかなと思います。 

知識欲は、動物の中でも人間に与えられた特権のようなものだと思うんです。漠然とぼーっと生きるのではなく、ちょっと調べてみるとか考えてみることをしたら、人生はもっと楽しくなります。考えるきっかけはもういっぱい、無限にあります。好奇心を持って周りをよく見て、と伝えていきたいです。