専任の教師を配置した
「探究」という教科の狙いは何だろうか

  • 追手門学院中・高等学校 / 探究科
    佐藤 佑平

専任の教師を配置した
「探究」という教科の狙いは何だろうか

2020年度に「教科」として本校で設定された探究。中学校では「総合的な学習の時間」、そして高校では「総合的な探究の時間」として各学年で2単位あります。最大の特徴は、この探究をメインにする教員が6名もいることです。他校さんと比べても、このように探究という枠で教員数を確保することは珍しい体制かもしれません。

では、この探究の授業にどのように取り組んでいるか、生徒たちにはどう受け止められているか、という部分ですが、私は、この時間は自己理解の時間だと思っています。今の生徒たちはやるべき活動が多く、一つ一つのことに意味を求める傾向があります。この探究の時間を通して、彼らは自分自身と真剣に向き合い、その過程で自己理解を深めていきます。

探究科では、To pave the path we STRIVE, nothing can stop our DRIVE. 「道なくとも切り拓く この意志を阻むものはなし」というヴィジョンを掲げ、自分たちで獲得する学びを目指しています。そして、「be Original」「be Creative」「be Confident」という3つの授業コンセプトと、「アート」「デザイン」という2つのツールがあり、これらを掛け合わせて授業設計を行っています。学年に関わらず、自分自身のアイデンティティや価値を見つけることに焦点を当て、他の生徒と共有し、クリエーションに繋げていくようにしています。様々な交流を通じて、異なる価値観に触れ、自分たちが成長したい方向性を見つけることを意図しています。これが探究の授業の大まかな流れになっています。

ピクトグラムにコラージュ、
仮面制作や靴のデザイン
自分の好きをアートに凝縮!

今年、私は高校1年生の授業設計を担当していました。この授業では主に「be Original」×「アート」に基づいた自己表現の要素を意識しながら、特定のテーマに沿ってアート作品を制作することに焦点が置かれています。基本的に、週2時間の授業内で、生徒たちはアート作品を制作します。例えば、自分の好きと感じるものを108個書き出して、その中の一つをピクトグラムで表現してみるといった形です。ピクトグラムという簡略化されたものだからこそ、「好き」の中でも特に大切にしているコアが残るんです。あとは、写真やコラージュ、マトリョーシカや塗り絵や動画やBGM制作なども実施しました。

このプロセスを通して、自分が気づいていなかった要素や、自分自身を再確認し、他者と共有することができます。そして周りのフィードバックにより、自分が世界とどう繋がっているのか、世界の捉え直しや他者との関係性、自分の外にある社会に目を向けるきっかけになっていると感じます。

さらに、この授業では、クリエイティビティを育むために、他者のアイデアと組み合わせて創り上げることも重要視しています。靴のプロジェクトでは、チームで1つの靴をデザインする課題が与えられました。制作のテーマは、「be Happy」。チームの皆が思う幸せの要素を一つの靴に込めて表現していきます。テーマを膨らませて、それをどう形にするか、それぞれのチームがアイディアを出し合いながら、創意工夫する姿が印象的でした。

探究という取り組みが
特別な時間でなくなることが最上のゴール

探究科が大事にしている要素が他の教科にも広がっていけばいいなと思っています。今実践しているプログラムがさらに発展して、生徒たちが自己表現や他者との関わり方をより自然なものとして受け入れられるようになっていることが理想なのです。生徒たちが日常生活や他の教科の授業の中で、自己表現や他者との関わり方を意識することができるようになっているということです。

Drive「とりあえず、やってみる」、Reflect「捉え直す」、Intersect「関わろうとする」、Vibe「楽しもうとする」、Exhibit「鑑賞し合う(映し出してありのままを見る)」このマインドセットが、どの授業でも、どの活動の中でも生徒たちに見られるようになり、自分たちで学んでいく人物の育成が我々が目指す完成形だと思っています。